虫歯は昔の考えでは、ただ一方的に悪くなり、虫歯になったら虫歯になりそうな部分を含めて削る(昔はこれを予防拡大と呼びました)という考えかたでしたが、現在はこのような考え方は否定されています。
削る部位は最小限で、初期の虫歯ではフッ素などを使用して経過観察を行う事も行われています。
それでは虫歯はいつ削れば良いのでしょうか?
1.虫歯を削ると何が問題なのか?
虫歯を削るとその削った部分に人工物である、金属やプラスチックに似た材料(専門用語でコンポジットレジン)、セラミックス、セメントなどの材料で修復する治療になります。
いくら科学が進歩して、歯に対する接着性が上がり審美性が良くなっても所詮は人工物です。
自分の歯のように加齢(エイジング)はしてくれません。
人工物は劣化しかしないのです。
優れているというセラミックスを使用しても他の修復物よりはましなだけで自分の歯ほどは良くありません。
修復物をつける時に使用するセメントは確実に時を経るごとに悪くなります。
最も優れているセラミックスの経年劣化は非常に少ないです(材料が陶器なので)。
恐らく200年経っても割れなければ綺麗なままでしょう(確実に人間の寿命よりは長いです)。
これがまた問題です。
人のはは経年的に黄色くなります(これには歯の神経と血管が関係しています)。
セラミックスは白いままです。
90歳で真っ白な歯は不自然ですよね。
自分の歯はちゃんとエイジングしてくれます。
やはり人工物はこれだけ色々進歩していても、作りものです。
審美的・機能的に色々問題を生じるので極力虫歯にならないことがやはり重要なことなのです。
2.虫歯になったら、いつ削れば良いのか?
1)現在はすべての虫歯を削る訳ではない
昔は虫歯になると虫歯になりそうな部分を含めて削る考えでしたが、現在は初期の虫歯であれば歯ブラシ指導を含めたお口の清掃方法を指導してフッ素を併用して経過を見る方向にきています。
しかし、管理が十分行えない患者さんや虫歯の活性が高い方(虫歯になり易く、治療の跡が多い方など)は、削って治す事もあります。
2)実際にどれくらいの深さで削った方が良いのか?
これは虫歯の深さに対してレントゲン写真を用いた研究から、ある程度の深さになると進行が早くなる事が明らかになってきています。
これらのことから、削る判断を行う事が多くなりました。それは象牙質(歯の表面であるエナメル質の内側にある部分)に0.5mm進入した場合と、同じく象牙質の1/2に進行した虫歯は進行が早くなる事が分かっています。
この深さになった虫歯は治療の対象になります。
3)日本において実際の削る時期について
レントゲン検査は健康保険で行う事ができますが、研究のように頻繁に撮ることはできません。
当然ですがレントゲン被曝するからです。
最近ではレーザーを使用した虫歯の深さを測定する医療機器も出てきています。
写真のドイツ製 Ka-Vo社 ダイアグノーデントがこれにあたります。
今後、これらのレントゲンを用いないで、正確に虫歯の深さを測定できる医療機器が大きく発展してくれることを祈ります。
虫歯の菌などの数を検査する方法もありますが、日本においては自費治療となるため一般的には行われていません。
そのため実際には歯科医師の今まで自分が持っている虫歯の進行に対する経験則から削るか削らないかの判断をすると思います。
まとめ
最近は虫歯を全て場合で削って治療を行う訳ではありません。浅い虫歯の場合は削らないで経過を見ることもあります(ただし、歯科医院で管理できそうな場合のみ)。虫歯の深さが象牙質の1/2まで進んでしまった場合は急速に虫歯が進行するので、その場合はすぐに削って処置をすることになります
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