日本では銀歯を使用した虫歯治療が数多く行われますがこの理由はどのようなものなのでしょうか?
極力目立つ銀歯を入れたいと思う人はいないはずですが、このような銀歯を使用するには理由があるのです。
予防の先進国北欧では、日本人ほど銀歯を使用した治療は行われません。
私もアメリカ人の前で症例発表をしたことがありますが、日本の銀歯が多い事について指摘を受けたことがあります。
1.何故日本では銀歯を用いた治療が多く行われるのか?
日本では歯科治療に対して一般的に国民健康保険が普及して、一般的な歯科治療を受ける際にはこの国民健康保険が使用されます。
それ以外の治療は、自費治療となり高額な治療費となることが多いです。
この国民健康保険で銀歯を用いた治療法が適応されるので、大きな虫歯を治療する時は、銀歯を用いた治療になります。
もちろん、国民健康保険でも白いつめものを使用した治療法は存在します。
これはコンポジットレジン充填と呼ばれる治療法で、虫歯を削った後にプラスチックに似た材料であるコンポジットレジンを歯につめる治療になります。
2.銀歯と白い詰めものの差は?
銀歯の治療を行う時には、その日のうちに治療が終了することはありません。
治療を受けた歯科医院で、銀歯の型取りを行ってそれに石こうと流して模型をおこします。
その模型上で多くは歯科技工士が銀歯の製作を行います。
その為、銀歯をつくるには時間がかかってしまうのです。
見た目も良くないですし、数日に分けた治療になるのにどうして我々歯科医はこの銀歯の治療を行うのでしょうか?
それは、強度の問題からです。
人の噛む力は非常に大きく、一般的にはその人の体重位の力がかかると言われています。
歯ぎしりなどを行う人では、さらにその数倍位の力もかかることがあると言われています。
力があまりかからない部位であれば銀歯ではなくコンポジットレジンを使用した治療が行えるのですが、力がかかる部位ではコンポジットレジンを使用した治療を行うことが出来ない為です。
3.実際には銀歯と白い詰めものをどのようにして使い分けるのか?
力がかかる部分と力がかからない部分の使い分けとはどのようなものなのでしょうか?
詰める前のコンポジットレジン
1)前歯なのか奥歯なのか?
前歯の見える部分に銀歯は使用しません。
ただし、例外的に虫歯や他の原因(外傷など)で大きく歯がなくなっている場合は表側が白で裏側が金属という冠を入れる場合もあります。
通常は虫歯で無くなった歯の部分に、金属の詰めものを入れることはありません。
これは審美的問題と強度の問題もあります。
前歯は奥歯と異なり大きな力が加わることが少ない歯です。
その為、白い詰めものであるコンポジットレジンが好んで使用されるのです。
奥歯においても、小さな虫歯では白い材料であるコンポジットレジンを使用しますが、大きく歯が無くなってしまった場合は強度の高い金属である銀歯で修復することが多いです。
具体的には歯と歯の間である隣接面を含むか含まないかで分かれます。
ここに白い詰めものであるコンポジットレジンを使用すると2つの問題が生じます。
(1)歯と歯ぐきの境界を詰めるのが難しい
白い詰めものであるコンポジットレジンは粘土の様な材料です。
我々歯科医が自由に形を付与してあげることができますが、歯と歯ぐきの境界などは形を綺麗につけてあげるのが難しい部分でもあります。
この場合、銀歯のようにお口の型取りをして白い詰めもののコンポジットレジンインレー(専門用語でCRインレーと言います)で歯と歯ぐきの境界を綺麗に詰めてあげる方法も国民健康保険の適応になります。
しかし、何度かお話ししているように強度が弱いので壊れてします危険性が高いです。
このため、多くの歯科医はCRインレーをあまり使用しない傾向にあります。
(2)強度がどうしても弱い
昔からみると白い詰めものであるコンポジットレジンの強度や歯との接着性は大分向上してきました。
しかし、まだまだ銀歯ほどの強度はありません。
審美性以外に問題になることはありませんので、強度が必要な部分に関して(先ほどもお話しして奥歯の歯と歯の部分)は銀歯を使用することが多いと思います。
私自身も、このような力のかかる部分を修復する多くの場合は銀歯を使用します。
まとめ
虫歯治療を行う際には審美的な問題も重要ですが、それ以上に重要なのは治した状態が維持できることです。
小さな虫歯の場合は白い詰め物でも問題は起こりにくいですが、大きな虫歯になると強度のある金属か自費の方が良いでしょう。
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